楽走会

10回城内坂ウルトラマラソンに参加して

 本大会に参加するのは5回目となる。この大会は22敗であり、今回で勝ち越しをしたく3年連続参加した。この大会は、エイドでの心温まるもてなしを受けて元気が出る大会である。また、本コースは約200mの標高差があり、10周で約2,000mの標高差という周回コースでは、日本一アップダウンの激しいコースと言われている。昨年、10周目では走れず、歩いてでの最終ランナーのゴールであった。

 今年は、猛暑の影響であまり走れず、長く走って15km程度の練習であるため、完走できるかどうか全く自信のない自分であった。これは全く言い訳けにならない話であり、後は当日を待つだけである。

  1.大会前日(929日(土)

 午前11時過ぎに、妻に車でつくばエクスプレス線の流山セントラルパーク駅まで送ってもらう。そこから守谷駅で乗り換え関東鉄道常総線で下館駅に行く。車中では蕎麦の花が咲いているのを見ながら楽しむ。下館駅から益子駅に行くには2時間弱の待ち合わせのため、下車して昼食を摂ることにした。コーヒーショップに入り、久しぶりにハヤシライスを食べる。1415分発の真岡鉄道に乗り込み15時に益子駅に到着する。その間、SL列車に出合うがかなり空いていた。益子駅から徒歩にて20分程度で受付の城内坂公民館に到着。受付を済ませるとゼッケンと10回大会記念の重厚で伝統ある益子焼の参加賞を受取る。本日の宿泊先である民宿「山路」に行く途中、陶器店に立ち寄る。

 山路に到着すると、昨年同宿した牧昌吾さん(利根川楽走会副会長)から声をかけられる。牧さんの走る仲間である菊池亮さん(利根川楽走会会長)、菊池さんが丹後半島100km時に知り合った嶋田祐史さん(南房総市)との自己紹介を行う。ゼッケンをシャツに付けながら思い思いの語らいを行う。また、各自のウルトラマラソン経験談が語られた。この4名が同宿者となり、一緒に朝食の調達にコンビニに出かけ、おにぎり、サンドイッチ等を購入。

 宿に戻り、早速入浴。1830分過ぎに夕食を同宿4名でビールを飲みながら語らう。

お姉さんに翌日の夕食をお願いし、20時過ぎに就寝。

2.大会当日(930日(日)曇り後大雨)

 午前130分に起床。急いでおにぎり等を食べる。4人のメンバーは各々出かける準備をする。2時半前に宿を出てスタート地点まで徒歩で行く。曇り空でホットする。今回は、長袖シャツとハーフパンツで雨と寒さ対策で望むこととした。

 大塚代表の挨拶が行われた後、午前3時スタート組の仲間は100km36名、80km2名、50km1名の選手が城内坂公民館前をスタートした。寒さは感じず、真っ暗闇の中。懐中電灯、尾灯をつけて走る。2kmの表示を過ぎた地点にあるマロニエ薬局から急な上り坂になる。

 まだ、上り坂に身体がなれていないため、登りはかなり辛い。何でこんなにきついコースにチャレンジするのか自問自答してのろのろと歩くがごとく走る。3kmを過ぎると、またもや厳しい上り坂である。真っ暗闇のなかを黙々と走る。益子町森林公園の中にあるコース最高地点である高館山の近く(海抜290m)のエイドに到着したが、一周目はだれもいない。これからが、急な坂道を下って行く。真っ暗闇の下りは、足元を注意しないと危険である。膝に負担をかけないようにして走るが、容赦なく膝に負担がかかる。雨もぱらつくが気にならない。ようやく6km手前の上大羽の広い道路に出る。スタッフが行き先を指示している。ご苦労様と声をかけて緩やかな下り坂を走る。7km手前で左折すると、またもや上り坂となる。上り坂の頂点である約7.5km地点のエイドに到着したが、ここもまだエイドがない。晴れていると日光連山が見える場所であるが、今回は期待できるであろうか。

 この道は舗装が行き届いており、走りやすいが、膝に大いなる負担がかかる所でもある。窯元つかもとを通りすぎ、小峰窯元センターを右手に見ながら走ると9km地点を過ぎる。

しばらく行き、左折すると城内坂に入る。左手に民宿「山路」を見ながら益子窯元共販センターを目指す。1回目のトイレ休憩のため公衆トイレに入る。

 1時間16分でスタート地点に到着。昨年と比較すると8分の遅れをとっている。エイドで給水、軽い給食をして再スタートする。

 2周目は1時間22分を要する。明るくなってきたので、懐中電灯と尾灯を置いて走り出す。懐中電灯がないと走りやすく感じる。7.5km地点でのエイドに到着すると日光連山がうっすらと見えた。それ以後は雨のため近くの景色も見えにくい状況であった。エイドでの梨、コーラがとても美味しい。雨が降り出して来たので、4周目から透明のポリ袋を被ることとした。この判断は正解であった。その後は雨が強く降り出し、どしゃ降りの雨模様となる。従って、温かいそうめんはありがたい。5周目の下り坂から膝の負担が影響して下るのが辛くなる。それでも、何とか上り坂で挽回できる。雨の降り方が半端ではない。水溜りを避けて走るが、容赦なくシューズに水が入ってきて不愉快である。山から見る景色は全く見えない状況である。ただ、ひたすらのそのそ走る。67.5km地点でのエイドでは、膝の痛みで気力が低下してきた。もう1周でリタイアの気持ちに傾く。またもや80km3度目のリタイヤになるかもしれないと思いながら、ひたすら衝撃による膝の痛みを堪えて下り、7周目をクリアする。

 スタート地点では、最後の1周との気持ちで長めの休憩をとり、給食では女性スタッフが作ってくれたニンニク入りのパスタを食べる。温かいパスタが胃の中に入っていくのを感じる。パスタを食べ終わると何ともいえない充実感を感じる。このパスタが勇気と元気のパワーに変化した。気持ちが前向きになり、足取りも幾分か軽くなったように感じる。

 4km手前でのエイドでは、スタッフと語らいも充実する。気持ちが完走に変化している。パスタとスタッフの励ましのお陰である。下り坂にくると向い風の冷気で寒さを感じる。吐く息も白く見える。7周目を無事クリア。気温16℃強。寒いわけである。パスタのお陰で元気がでたお礼の挨拶をスタッフの女性に言う。寒さ対策でおでん、味噌汁をご馳走になる。食べるものは何でも美味しい。再スタートする旨を告げてのろのろ走り出す。気分は充実している。9周目を1時間55分で想定すると、午後530分前に到着できるであろうとの予測をたてて走り出す。走るランナーも少なくなる。雨は相変わらずどしゃ降りの状況である。 最終回では大塚代表が伴走する情報もあり、黙々と夕闇迫るコースを走る。後2周となると気分的に楽になる。下り坂は膝が痛くとても辛い。それでもガマンしながらの走りを行う。7.5km地点のエイドを過ぎるとゼッケン番号9番の黒田季子さんに抜かれたが、遂に9周目を走り終える。予想通りの午後530分前の到着。大塚代表から伴走のコールがかかる。最後の1周は真っ暗闇の山を上り下るので、体力を付けるため給食、給水を行う旨を告げる。

 大塚代表は、黒田さんにを声かけている。大塚代表に再スタートを告げると伴走をしていただく。雨のため懐中電灯の明かりが反射され暗闇での効果は期待できない。城内坂の下りでは、後ろから来た黒田さんに軽く抜かれる。大塚代表との語らいをしながら黙々と走る。上り坂になると、黒田さんが見え出す。徐々に追い着いて行く。大塚代表が「鈴木さん無理して走っているのではないかと」気遣ってくれる。今の走力では、急な上り坂になれば必ず抜かれる旨の話をする。何とか黒田さんを追い抜くことが出来た。大塚代表は黒田さんを伴走する形になったが、予想通りマロニエ薬局を過ぎた急な上り坂で一気に抜かれる。今年も最終ランナーとなる。最終ランナーでも完走できる喜びは格別である。4km手前のエイドに大塚代表の伴走で無事到着。エイドのスタッフと最後の語らいをしていると、後続にもう1人のランナーがいるとの情報があり、大塚代表はそのランナーを待つことになった。これからは1人旅となるが、足元を十分注意しながら下りて行く。寒さでブルブル震えながら脚の痛みを堪えて、急な下り坂をゆっくり下りるが、大変危ない足取りである。95km手前で前方から軽トラックが登ってきた。見ると7.5km地点のエイドのスタッフである。その車は通り過ぎていった。しばらくすると後ろから車の音が聞こえてきた。先ほどの車だ。スタッフは、後ろからヘッドライトを照らしてくれる旨の指示(恐らく、大塚代表の配慮であろう)をしていただく。大変ありがたいことである。真っ暗闇の急な下り坂をヘッドライトの明かりでゆっくりと下れるのは大変贅沢な伴走である。無事96km手前の上大羽に到着。これから約1kmゆっくりした下り坂になり、ほっとする。それでもしばらくの間伴走していただく。約96.5kmで元に戻り、後続のランナーと、伴走の大塚代表を迎えに行く旨の話しを聞く。大変ありがたい伴走に御礼を述べて別れる。97.5kmのエイドに到着。

 完走できる喜びを最後のエイドでスタッフと語らう。そしてよろよろと下り出す。残り2kmの表示を確認し黙々と下って行く。足は限界状況であるが、気力はパスタのお陰で元気である。今回も、大塚代表の伴走と、スタッフのヘッドライトで照らしていただくありがたい伴走に勇気と元気のパワーを貰い、無事1935分に両手を上げてでのゴールテープをきる。16時間35分(正式タイムではない)のドラマは終了した。ゴールでは同宿した利根川楽走会の菊池会長が傘を持って待っているではないか。ビックリすると同時にありがたさを身にしみて感じる。大変うれしい心温まる行為に甘えさせていただく。菊池さんは80kmでリタイアされたにも関わらず、寒い雨の中を待っていただいた。大変ありがたいことです。

 同宿した仲間2名+1名が完走パーティを行うので待っているとのこと。大急ぎで宿に帰る準備をし、大塚代表にお礼の挨拶をする。「来年も是非来て下さい」との話しを聞いてお別れする。城内坂公民館で休息していた若い女性ランナーが疲れ切ってしまい、複数の男性に担がれて車に乗る場面に遭遇。自分は何とか歩ける体力がある。昨年は、歩くこともままならない状況のゴールからすれば上出来のゴールではなかろうか。

 宿に戻り、走る仲間である牧副会長、嶋田さん、羽石さん(越谷市)の嬉しいお出迎えを受ける。宿のお姉さんもお出迎えしていただく。疲れた身体も吹き飛ぶようである。皆さんにお礼を述べる。早速、お風呂に入り、冷えた身体を温める。足、腕が痛い。

 入浴後、午後830分頃から5名のメンバーで完走祝賀会を開催。美味しいビールで乾杯。疲れているのでビールはコップ1杯でやめる。ウルトラマラソン談義が楽しく続く。新米のご飯がとても美味しい。菊池会長から利根川楽走会の話しを聞く。平和を愛し、ランニングを愛する利根川楽走会の話しがされる。

 午後10時頃に終了。疲れがドット出たので歯磨きもせず就眠。トイレに行くため起きあがるが大変苦労をする。翌朝、630分頃起床。羽石さんは早速歩きに出かける。私は帰る仕度をしてから、40分程度ゆっくり旧コースの一部を歩く。

 朝食は、午前8時過ぎに女性ランナーである松沼佳子さん(宇都宮市)を交えて6名の語らいがなされる。朝食後、お姉さんから各自にお赤飯をいただく。どうも完走祝いのようである。民宿「山路」を出てから、牧さんのマイカーで守谷駅まで取手に住む菊池さんと同席させてもらうこととなった。疲れた身体には大変ありがたい。

 9時過ぎに大塚代表の大誠窯のお店に嶋田さんを含め4名で立ち寄る。そして、大塚代表から伝統の登窯を見せていただくと同時に、最後に赤松で仕上げの焼を行う話、赤松の薪を調達する苦労話をも併せて聞かせていただく。最近では、薪ではなく、ガスで陶器を焼く所が圧倒的に多いとのこと。薪で焼く登窯の伝統を残している大塚代表の心意気に敬服すると同時に、益子焼の伝統を守り続けることを心から応援したい。大塚代表には走ることを含め、新しい経験をさせていただき感謝する次第です。そして、完走祝いのお土産を購入した。

 最後に、同宿した仲間の温かい励ましを受けての66歳の完走は、とても嬉しい24回目の完走であった。皆さんの温かい励ましが心にしみる2日間でした。感謝、感謝。

                                                                      200710月9日

                                鈴木   進