南アフリカワールドカップについて論じた文章参考までにそのままコピーさせてもらいました。 

ワールドカップ南アフリカ大会の成功を祈って
ファイナンシャルプランナー大山 潤

2010年6月11日に南アフリカで開幕するFIFAワールドカップの組み合わせ抽選会が、ケープタウンで2009年12月4日に行われました。抽選の結果、日本は予選リーグでE組に入り、オランダ、カメルーン、デンマークとの対戦が決定しました。日本の初戦は2010年6月14日で、南アフリカ中部のブルームフォンテーンでカメルーンと対戦することになります。

抽選会では、日本代表の岡田監督が、2009年の9月に親善試合をしたばかりのオランダのファンマルウェイク監督に、「で、日本の監督はだれなの?」と質問され、「おれだよ!」と答えたという出来事があったことを岡田監督が会見で明らかにしました。ワールドカップという舞台を考えれば、予選突破どころか1勝することさえ難しいミッションだとは思いますが、岡田監督と日本代表には、この出来事のお返しもかねて、目標であるベスト4進出を目指して頑張って頂きたいと期待しています。

さて、今回のホスト国である南アフリカと代表チームには、サッカーイベントとしてだけでなく、経済的また政治的側面からも注目が集まっているようです。現在の南アフリカの状況は、リセッションから脱出したとはいえまだまだ不安定な経済状況が続いていることを考えると、なおさらのことだと思います。

■南アフリカの状況

南アフリカでは、2009年度(執筆時点12月初旬)に100万人近い職が失われ、失業率は24.5%に達しています。政府は、2009年度末までに50万人の雇用機会を創出するという目標を定めましたが、労働組合組織はこの目標達成に懐疑的のようです。この点について、大統領のJacob Zuma氏も、リセッションからの脱却とタスクチームの努力にもかかわらず、より多くの仕事が失われるだろうと警告を発しています。

また大統領のZuma氏は現政権のANC(アフリカ民族会議)についても、お金への欲望とポジションへの執着、そして何百万ドルという経済コストを生み出しているハイレベルの汚職疑惑の数々によって投資家からの信頼を大きく傷つけている、という辛辣な警告を発しています。

■南アフリカとワールドカップ

Bloombergの記事(12/8)の中でバンクオブアメリカは、南アフリカの2770億ドルの経済は、来年3.2%膨らむと予想しています。経済の回復が加工品とコモディティに対する需要を増加させこと、政府が発電施設と社会福祉への継続的な支出を行うこと、さらにワールドカップの効果が、来年の成長率に0.5%上乗せするだろうということが理由です。

また同記事の中で、ワールドカップ効果が株式市場、特に消費関連株に好影響を及ぼすだろうとも予測しています。ただしこれには、これから6ヶ月間のうちに高いパフォーマンスを残すものの、キッフオフが近づくにつれてパフォーマンスが落ちていくだろうというオマケがついています。日本でいうところの「ニュースで買われ事実で売られる」という感じでしょうか。

南アフリカは、予選リーグA組(南アフリカ、メキシコ、韓国、ギリシャ)に入り、開幕戦でメキシコと対戦することになっています。もし南アフリカが予選リーグを突破し、決勝トーナメントでも好成績を残すことになれば、日韓ワールドカップで日本中が沸いた以上に、ファンだけでなく投資家も、より長くより大いに盛り上がることができるかもしれません。

■南アフリカとサッカーとアパルトヘイト

南アフリカは、悪名高いアパルトヘイトによって、白人と黒人あるいは有色人種の人々は、居住区だけでなくサッカーにおいても同じグランドに立つことは許されていませんでした。結局1976年ソウェト蜂起(※)以降FIFAから除名され、1992年6月にFIFAメンバーとして理事会の承認を受けるまで、国際舞台に立つこともなく世界から批判を浴び続けることになります。

残念ながら、アパルトヘイト制度が廃止された現在も、こうした影響は完全には癒えていません。南アフリカの1/3以上の人々が、1日2ドル(180円)以下で生活していると言われています。ワールドカップ開催による収益は、国の貧困層まで少しずつでも流れ込み彼らを裕福にするだろうと考えられており、Zuma大統領もこうしたストーリー支持する一人のようです。

実際のところ、国際的なスポーツイベントの開催は、大きなプラスの効果を生み出す一方で、さらに大きなマイナスの遺産を残こしてしまうことも知られています。経済アナリストの中にも、こうしたイベントによって国が裕福なることはない、というネガティブな意見を持つ人も少なくないようです。

それでも個人的には、今大会の成功によって、経済的なプラスの効果だけではなく、今以上に人種の壁を越えて南アフリカが一つになれることを祈るばかりです。

※)ヨハネスブルグ南東部のソフェト地区で発生した、アフリカ系住民のオランダ系白人の言語を教育に導入することに抗議した若者たちが、容赦ない警察の弾圧により死亡した事件。