1964年(昭和39年)
世田谷区立新星中学校      生徒会雑誌         こすもす 


2年生の作品

ギター
2年C組   菊池  亮
 もうすぐ3年生。学校の勉強に追われている毎日。学校は,はやくて3時ころ帰り遅くなると6時頃になる。息つく暇のない一日。この息つく暇のないところにたった一つ心を気持ちよくしてしてくれるのが,あの日焼けし,2カ所ぐらいヒビの入っているギターだ。縁側に座り「お手々つないでのみちを...」と声を合わせてひくときは何もかも忘れてただ指先にだけ集中する。なんて気持ちがよいのだろう!  全文は次のページ


 1964年初めて手にしたギター。そのときの様子を書いた私の文章が2年生の作品として全校に紹介された。それが上の文章です。
 当時の私の家は,貧しかったので買うこともできなかった。たまたま手に入ったギターは今から考えるとクラッシックギターだった。小さい手にギターを握った感触は大きかった。教則本を買ってやろうとしたが続かなかった。チューニングがなかなかできず音が思うように出ない。ひび割れのギター。そしてここで私は
自分の小さな手にはこのギターという楽器は合わないのだと思いこんでしまった。
 (このときギターの基本を教えてくれる人がいたら..ギターにはいろんな種類があるフォークギターはネックが小さくてクラッシックギターはネックが太い チューニングを的確にするには )
 
それ以来私はギターを弾いている人を見るといいなぁと何ともいえない気持ちで眺めていた。大学時代いろんなうたを歌い覚えたが伴奏するギターにふれる気がしなかった。
そして,就職した。教師として若い中学生の心をつかむため若い私も一生懸命だった。そんなとき同じ年の同僚の数学教師がことあるごとに教室にギターを持ち込み生徒に歌を教え生徒と歌っている。
いいなぁあんな風にやれたら。そしてその同僚にちょっとギター触らせてといってギターのネックを握った瞬間 あれぇーこんな細いのか 俺にもできるかもしれないと電撃のひらめきが走った。それからだ,すぐにギター教室の門をたたいた。若いフォークギターの先生が楽しく教えてくれた。コードの教え方が合理的。そして D とD7の二つのコードで歌える歌を練習。初めてギターを弾きながら歌えた。このときのうれしかったこと。私の生活が変わった。


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